レンタルと言えば、レンタカー、レンタルスペース等、これまでは対面型の非EC事業が主流でしたがその後、宅配型のレンタルとしてCD/DVDレンタルが普及したのを皮切りに、レンタルドレス・着物など、ネットで借りて返却するといったビジネスモデルが浸透してきました。
商品を直接購入するのではなくレンタルで十分満足し、モノを「所有」することから「利用」へといった消費者ニーズの変化や、商品の発送・返送の物流側の仕組みも整ってきた時代背景とも重なり、今となっては様々な商材のECサイトでレンタルサービスを展開しています。
ECサイトでレンタルを展開することは事業者側にもメリットが見出せます。これまでのように単純に物を売り切るだけでなく、まずはレンタルとして貸し出すことで顧客との接点を持ち、接触回数を増やすことでその後に購入に至るといったビジネスサイクルを確立させることで、顧客のニーズの把握にも繋がり、新たな需要の掘り起こしにも繋がります。最近では、レンタル品の持ち逃げ・未返却リスクを保証するサービスも登場してきており、より安心してレンタルECを運用できるようになってきております。
このような状況下で、レンタルECに参入する事業者が増えていますが、いざレンタルECサイトを構築・運用していく為には、専用に設計された機能が必要です。どのようにすればレンタルECサイトを構築できるのか、運営に必要な機能は何なのか、事例も交えながら深堀していきたいと思います。
レンタルECサイト構築の為のカートシステム比較
独自ドメインの自社サイトとしてレンタルECサイト構築する為には、まずはシステムの選定が必要になります。その方法は大きく3種類ありますので、それぞれのメリット・デメリットを比較していきます。
物販のショッピングカートシステムをベースにカスタマイズ
既に物販ECサイトを運用している場合、そのシステムをベースに、部分的にカスタマイズをするという方法がまず思いつくでしょう。システム導入のしやすさに目が行きがちですが、レンタルECの場合、レンタル期間の抑え方や日別の在庫の持たせ方など、データベースの構造自体が物販サイトとは全く違います。最初は少しのカスタマイズで済むと想定していても、かなりのカスタマイズが必要になることに気付いた時には、システムの入れ替えに相当する工数にまで膨れ上がっていることがよくあります。
また、カスタマイズを行うには、専門知識を持った人的リソースの確保も必要です。システムの構造が根本的に異なることを理解し、ECの運用面もマンパワーで乗り切る覚悟があれば良いですが、レンタルECとして適したUIのサイト構築を目指そうとすると、物販サイトベースのシステムではどこかのタイミングで壁にぶち当たるでしょう。また、部分的なカスタマイズでは、システム全体のバージョンアップ時に、その箇所のみ個別対応が必要になってきます。セキュリティの更新についても同様の問題を抱えた状態となります。
具体例:運営中のECキューブやShopifyをベースにカスタマイズする
スクラッチ開発でレンタルシステムを構築
スクラッチ開発は自社の要求に沿ってシステムの設計、要件定義を行い、完全に要求に沿ったシステムを開発することができます。既存のパッケージを使うか、ゼロベースから設計し、開発していきます。メリットとして特殊な商材やレンタル方法の場合にも対応ができ、レンタルECを運営しやすい理想のシステムを構築できる可能性があります。
一方でデメリットは、開発がある程度進んだ段階にならないと動作確認ができず、その時点ではじめて、想定していた運用との乖離が発生したことに気付くといったリスクも潜んでいます。システムの構築そのものに対する開発費用の投資に加え、システム完成後の保守、メンテナンス、その後の改修についても費用を用意し、対応しなければなりません。自社でエンジニアを抱えていない場合は、外部のシステム会社等に依頼をする必要もあります。
具体例:システム開発ベンダーに依頼してゼロから完全にオリジナルなシステムを構築する
ASP(クラウド型)のレンタルカートシステムを利用
レンタルECサイトの構築には、ASP(クラウド型)のレンタル専用のカートシステムを利用するという方法があります。この場合、プラットフォームには既にレンタルECに必要な機能が備わっている為、開発費用が不要です。利用申込(トライアル含む)をするだけで、すぐに動作確認ができ、自社の運用に適しているかの判断ができます。また、日々のアップデートがあるので、システムは常に最新の状態を保ちながらの運営をすることができます。
このようなメリットに対し、デメリットとしては100%要求通りに当てはまるかは難しい部分が出てくると思います。ASPは多くの事業者が利用するシステムになり、汎用的な機能として用意されいるため、運用をASPの仕様に寄せていく部分が発生します。ただし、システムの仕様をしっかりと理解し、自社のEC運用とすり合わせを行いながら、最適な使い方を見つけ出していくことはとても重要です。
具体例:現時点ではレンタルECのASPとして国内唯一のaishipRENTALを利用する
レンタルEC運営のための専用機能
それでは、レンタルECサイトを運営する為には、どのような専用機能が必要になってくるのでしょうか。
国内唯一のレンタル・サブスク専用クラウド型ECサイト構築ASPのaishipRENTALに備わっている専用機能をベースに解説していきます。
レンタルカレンダー機能
レンタルECサイトの大きな特徴は、商品ページ内のカレンダー機能です。オンラインでレンタルサービスを展開する場合、
お客様にレンタルしたい日(期間)を注文時に指定してもらう必要があります。これは、通常の物販ECにあるようなお届け希望日を選択するだけでは不十分で、レンタルの場合は返却日までの一連のスケジュールをカレンダーに表示する必要があります。そうすることで直観的にレンタルしたい日を選択して注文手続きもスムーズに進めることができます。
レンタルスケジュール機能
バックヤード側の設定では、レンタル商品の利用期間や発送・返却に関する期間を、一連のレンタルスケジュールとして、商品ごとに在庫数と連携させるデータベース上の構造が必要になります。具体的には「発送日」「お届け日」「ご利用日」「返却日」のような項目です。また、商品によっては返却されてから、次にレンタルされるまでのリードタイムが必要になる場合があります。返却後、清掃などのメンテナンスに出してから在庫に戻すといった期間をレンタルスケジュールに組み込めるようにしておく仕組みが必要になります。
aishipRENTALの標準機能では、レンタル利用期間は商品単位で固定のスケジュール設定となりますが、レンタル商材によっては、レンタル利用期間を利用者側に選択してもらいたい場合もあるかと思います。その場合は、こちらの記事にて解説しております内容を設定することで、利用者側で利用期間(レンタル泊数)を選べる状態になります。
日ごとの在庫管理機能
例えば、ある商品の在庫が1点限定物だとします。物販ECであれば、在庫1の商品が1点売れれば「完売」で販売終了となりますが、レンタルECの場合は、レンタル利用後に「返却」されてきますので、商品が戻るタイミングで在庫を1に戻す必要があります。
これらレンタルスケジュール機能や、日ごとの在庫管理機能の設定内容を、レンタルカレンダーに反映させることで、商品ページのカレンダー上にレンタル可能な日を表示させます。
レンタル希望日から在庫を検索する機能
商品を検索する際に、レンタルを希望する日(期間)から商品を探す機能があれば便利で、レンタル注文数のコンバージョンアップに繋がる可能性があります。利用者はレンタルしたい日が決まっていることが多く、日付から検索することで、レンタルしたい日(期間)にレンタルできる商品に最短で辿り着けます。
この検索機能が備わっていない場合、レンタルしたい商品を見つけても、利用したい日にレンタルできない状態になり離脱に繋がってしまいます。
レンタル受付不可日設定
レンタルECサイトは24時間365日稼働でレンタル注文自体はいつでも受け付けられますが、レンタル品を貸し出す実店舗には定休日や、長期休暇、運用の都合でレンタル不可に設定したい日が出てくると思います。予め決まった日を一括で受付不可としたり、先の日程の注文は受け付けられないように、何ヶ月先までレンタル受付が出来るか等の設定もあると便利です。
レンタルECサイト事例
上記でご紹介した専用機能を利用したレンタルECサイトの構築事例をご紹介します。どの事例についても商品ページ内にレンタルカレンダーを設置しており、各サイトに遷移することで動作確認もしていただけます。
ドレスレンタル事例
こちらは2018年春にオープンしたレンタルドレスのサイトLULUTI RENTAL STORE様で、イオンリテール株式会社様が運営しております。特にレンタル商品の検索機能が充実しており、ブランドやサイズや利用した日を基準にレンタルできるドレスを検索することが出来ます。
どの商品も3泊4日の均一価格で分かりやすく設定されていますが、利用者の用途に応じてレンタル期間を延長できるよう設定をしており、1日延長ごとに延長料金の設定もしています。
家電レンタル事例
2020年春になると、家電のレンタルサイトがオープンしました。ECカレント様が運営しているRentoco様では、様々な家電をレンタルしています。高額な商品でも低価格で使用感を試せ、使い終わった後は返却するだけで良いので、保管場所や廃棄処分の手間や費用を省けます。今後、レンタルした商品が気に入ればそのまま購入できるといった購入フローも構築されるかもしれません。サブスク型の定額レンタルもサービス展開頂いております。
アウトドア・キャンプ用品レンタル事例
2021年になるとコロナ禍で加速したキャンプブームに乗り、テントをはじめとするキャンプ用品レンタルECもオープンしています。実際にキャンプをする際は、テントやシュラフの他、様々なアイテムが必要となってきますが、まとめてレンタルするとセット割引もあるようで、初心者でもキャンプをするきっかけになりそうです。
レンタルEC運営で注意すべきは未返却リスクへの対策
レンタル事業の運営は、利用者が期限内にきちんと商品を返却することで成立するサービスです。しかし、貸し出した商品が予定通りに返却されないケースや、持ち逃げのリスクも想定しておく必要があります。万が一そのような事態になった場合は、法的措置を含めた然るべき対応が必要になってきます。しかし、未返却時の対応コストを無くす方法としてレンタル未返却リスクの保証サービスに加入することも有効です。
また、不正ユーザーによるレンタル利用を未然に防ぐ方法として、保証金(預かり金/デポジット)を預かる仕組みを構築したり、身分証アップロード等による本人確認を確実に行う運用フローの構築も重要です。
最後に
いかがでしたでしょうか。レンタルECと通常の物販ECは、一見すると近しいシステムに見られがちですが、レンタルECとして運用する為にはレンタル専用の機能が必要であることが見えてきたかと思います。そしてその土台となるシステムは自社の運用に最適なものを選定することが重要です。
物販のシステムをベースにする方法はよくされがちですが、構造上の違いを理解した上で、差し当たって軌道に乗るまでのお試し的な運用でやるのであれば不可能ではないでしょう。
独自性を求めた完全にオリジナルなレンタルECサイトを構築する場合は、スクラッチ開発で費用も期間もしっかりとかけて構築していく必要があります。しかし、余程オリジナルなことをやらない限りは、レンタルECに必要な基本機能が備わったASPで、安価に早く立ち上げを目指すことをおすすめします。